あれよあれよという間にもう年末ですね。

いつもの通勤経路には東寺があります。
東寺ってご存じない方も京都の絵によく出てくる五重の塔というとイメージできますでしょうか。
往路で見る朝日を浴びた東寺の塔、帰路で見る夜間拝観でライトアップされた東寺の塔。
毎日毎日美しいものと出会うのは本当に幸せなことですね。
同じ道を行き来するだけのことですのに幸せをいただけるなんてありがたいことです。

さて、今年の振り返りをされる方もいらっしゃいますでしょうね。
毎年「今年は早かった」ということが多かろうと思います。同じことの繰り返しの中、過ぎゆく時間が早く感じられるものということでしょう。
我が家の中学1年生の子供も「早かった」などと言いますが、本当でしょうか。

今年の初めごろ。うちの子供、小学校6年生の3学期の個人懇談会で「歴史がわかっていないようです」と担任に指摘され、聞き取りをして見たところ、江戸時代っていうものがいつの時代かわかっていませんでした。
ほんまかー!って思いますが、私たちの子供の頃とは違い、時代劇がテレビで放映されることがめっきり減り、江戸時代の存在も遠くなったというものなのでしょうか。
そこから歴史の話を復習して、理科も実は分かっていないようだし、このまま中学生になるなんて大問題!というところ・・・そこからどれほど復習に時間をとったというのか・・・・・と、そんな話をして「それがちょうど一年前だというのに、あなたはこの一年が早かったというのか。お母さんにとっては長かったよ。」というと神妙に同意しておりました。
さらに振り返れば中学校に入学して、部活も始まり、これまでやったことのないテニスに挑戦し、これまで通っていた塾も中学生コースになって気分も新たになったはず。
そんなこんなを子供と話していると「確かにいろいろ新しいことがあったし、よく考えてみると長かったな。夏のバーベキューしたことなんて遠い昔のようだ。」と言っておりました。
新しいことがあると振り返れば盛りだくさん、長く感じられるようです。

私の仕事の方では、クリニック開業(平成27年10月開業)して実質2年目であった平成29年は長い一年になりました。
何も分かっていないまま走り始めた平成28年のことはあまりよく覚えておりません。平成28年の夏は長く辛かった・・・くらいでしょうか。無我夢中のうちに過ぎてしまい、何があったのか把握できておりません。患者が少なく仕事が少ないのに常にバタバタしておりました。
それが今年は医師会の仕事も少しずつわかるようになり、クリニックの事務的なことも徐々に事務員に任せられるようになり、余裕ができてきました。
その分医療そのもの以外の連携などに力を注ぐことができました。
新しい患者も増え、新しい仕事も増えました。新しいおつきあいも増え、新しい楽しみもでき、盛りだくさんでした。

プライベートでは年初には飼い犬が亡くなり、人間と一緒にするなと怒られそうですが、家族を見送ることの寂しさ辛さと、しんどさをとってやると穏やかな表情で眠る犬の状態に安心しながら見守ることができたことなど、これまでは医師として見てきた終末期を自分のこととして体験いたしました。
また夏には癌末期の母を看取り、その続きで衣食住を配偶者に頼り切りで一人では生活そのものができない父の施設入所をサポートすることが始まりました。
こんなことを正直に書くとまた怒られそうですが、別居していた母を亡くすより、同じ家で暮らしていた犬を亡くした時の方が精神的には堪えました。たかが犬、ですのにね。
母亡き後残された父は施設にお世話になっているので、介護というほどの介護はしていないのですが、それでも父のあれやこれやで本当に忙しく慌ただしいものです。
父は私のことを「アイツ、ここに来てもほんまに2分もおらんうちに帰るぞ」と文句をいうのですが、その2分を作るために普段の移動経路を外れて施設に来て車を停めなんだかんだ、20分は父に関わらない時間を作る必要があるのですが、そんなことも理解してもらえませんしね。やれやれ、ですよ。
施設から実家に帰りたがる父への対応にも手を焼きました。ほとほと、ですよ。
愚痴もありつつ、自分のための時間も大切にするようにしています。
私自身の趣味である書道は平成28年から今の教室に通い始めたのですが、基礎コースが終わってますます楽しく、書道教室の先輩方の作品に刺激されながら初心者の私も家で練習をしています。
またなかなか通うことができず休みがちなジム通いもなんとか頑張っています。まったく痩せていませんが、痩せることはともかく(痩せればなおいいのですが)体を動かす楽しみが満たされています。

色々と自分の中で新しい体験が多く、子供と同じで新しいことが多いときは時間の経過は長く感じられるのだそうです。見知らぬところに行く時に往路は遠く感じられ復路は近く感じられるのと同じことだそうです。
今年はなんだかんだ長かったです。
その分新しい体験が多く実り多い一年だったということでしょう。
来年、さらに新しいことがたくさんありそうな予定です。
忙しくなるのかと思いながらもワクワクしています。こんな中年期に入ってからも新しいことに胸踊るなんてことがあるものなのかと、自分の人生を幸せに思います。

人は生まれた時から最期の日がくることが決まっています。もしかすると私も天災や事故などで来年という年を迎えることができずに亡くなってしまうかもしれないと本気で思いながら日々を過ごしています。
しかし、もしそうであったとしても急に今日という日が最期の日になったとしても、中学生の子供が遺されるのに後悔しないのかと指摘されても、やはり「いい一年だったしいい人生だった」といい切れる今の私です。
悲しいことがあったとしても、それから学ぶことも多く、そこから大切な人からの愛を感じることがあれば、それは悲しかったとしても不幸ではないのです。
このように感じられるというのはこの一年がいい一年だったということなのだと思います。

いろんな出来事があり、悲しいこともあったとしても、それでもいい一年でした。
お別れがあっても、いい別れでありました。いい時間をともにすることができました。

また今日もいい1日になるようにと朝の東寺の美しい塔を見上げながら思いますし、また明日もいい1日になるようにと暗闇に浮かぶ夜の東寺の塔を見上げながら思います。

そして来年もいい一年になると思います。
インターネットを通じて、業務を通じて、ご縁のある皆様とつながることでいい一年になると思っております。
来年もよろしくお願いします。