現代日本では、単身世帯が増加しており、今後も増えていくことが予想されています。増えているのは、若者の一人暮らしではなく中高年男性の一人暮らしや、高齢者の一人暮らしが急増しているのだそうです。
これまで結婚をして同居家族がいることを「標準」としてきた日本社会において、「標準」が変化してきているようです。結婚することもしないことも個人の自由ですし、単身世帯をよしとしない、ということではありません。
しかしライフスタイルの選択肢が多様になる一方で、要介護となった場合のリスク、社会的に孤立するリスクなどが高まっていくと考えられます。

独居の方が最期まで自宅での療養することは可能なのでしょうか。
答えは「可能です」。
独居の方が人生の終末期と思われて、そこから在宅療養をする。入院しないで最期まで家で療養することなんて、不可能なのではないか?と思われることでしょう。しかし、独居でも在宅で最期まで自分の居心地いい場所で過ごすことは可能です。
独居でも在宅療養・在宅看取りが可能であると言いましたが、もちろんたった一人では療養生活は難しいものです。支援が必要であることは言うまでもありません。

在宅で最期まで療養できるかどうかは病気の種類にもよります。
認知症であっても、あまりに重症である場合はほぼ寝たきりになりますからこれは自宅での療養が可能です。軽症認知症で火の不始末があったり徘徊があったりする場合が難しいものです。できるだけ住み慣れた環境で暮らしていきたいけれど、常に目が離せない状態になってくると独居そのものが難しくなってくることが多いです。
癌などの病気の場合、腫瘍による麻痺などがなく、室内を歩行できる方であれば最後の最後以外はなんとか手に届く範囲のものを自分で取ったりすることができますから、このような病気の場合は最期までご自宅での生活が可能であると思います。

独居で在宅看取り、というと、「さみしいのではないか」など思われるかもしれません。しかし、独居生活が長い方は一人で過ごすことを私たちが想像するほど苦にされないことがあります。もちろん人といる方が安心することは確かであろうと思いますが、一人の時間の大切さもよくご存知です。
また、ケアマネジャー、訪問介護(ヘルパー)、訪問看護、訪問診療、各職種が足繁く通うことになりますので、多くの人の見守りの中で過ごすことになります。
本当に「この方、人生で今が一番女の子(ヘルパーの皆さま)にチヤホヤされてるんじゃないのかな」と思うほどの大切にされようです。
それらの訪問サービスを受けるには経済的な裏付けなどが必要であることは確かですが、独居だから孤独死、というものとは限らないということです。

また、最終末期にはせん妄などの困った症状も出たりするもので、もし同居家族がいらっしゃれば、その対応に困ってしまって入院を選択されることもあるのですが、独居ですと、ご本人はせん妄でもあまり困ってることは少なかったりしますし(もちろん多少はご本人だって困っているのですが)、ご家族の負担を考えてのご入院という流れではなくなります。見守りを増やしたりしながらせん妄にも対応していき最期まで見守ることができることもあります。危険行動が目に余る場合は入院を余儀なくされたりもしますが。

これから単身世帯は増えます。配偶者に先立たれた方も、生涯未婚の方もいらっしゃいますしね。
それでも「『自分は一人だから最期はさみしい孤独死では?』と決めつけたものではないですよ」というメッセージをお届けしたいです。

当院では病院の緩和ケア病棟のバックアップをいただきながら在宅療養を支援し、最終入院での最期を希望の方の在宅での日々を見守ることもいたしますし、病棟への入院を考慮しつつもご自宅での看取りまでお付き合いすることもあります。
家族がいない方もそのお一人の場所が居心地よく離れがたい場所であるのです。その大切な場所でできるだけ気ままに暮らすのをお手伝いしますし、その流れの中で最期までお過ごしされるのを見守ることもいたします。一人だからといってさみしい最後ではありません。