在宅療養中の患者さんはしばしば入院することがあります。
誤嚥性肺炎、尿路感染症などの感染症のこともありますし、医療的な処置(手術など)を受けるための入院のこともあります。
在宅療養の主治医である私と病院での主治医あるいは外来担当医が密に連携することが大事だというのは当然のことなのですが、ではそのような密な連携はどうすればできるのか?という問題があります。
病院の主治医は多忙です。外来、手術や検査の当番、大学病院などでは外勤もあります。
この忙しい病院の医師との連携を密にするには、在宅療養の主治医である私は自分が出向いていくしかないかと思っています。
退院前カンファレンスやお見舞いに行くことで多忙な医師を捕まえることができる可能性があります。医師と会えなくても担当看護師と話すことで入院中の状況を把握したり、在宅療養で今後どのような支援をしていこうと考えているかを伝えることができたりします。
そんなに暇はない、という地域の医療者も多いのが実際ですが、少なくとも開業医は病院の主治医ほどがんじがらめではありませんので、地域から病院に出向く方が繋がりを持ちやすいとは思います。
先日病院の主治医から入院中の患者さんに関して電話をいただき、ご相談を受けました。今後の方針をどうしようかということでした。それについて私の意見をお伝えし「それはいいアイデアですね」と言っていただきました。
その後その入院患者さんをお見舞いに行ってみると私が想像していたより症状は重く、なるほど、これは主治医も悩みが深いものだと実感しました。
お見舞いに行った時、たまたまお電話くださった主治医とは違う科の先生が回診されていたので、その先生ともお話ができてよかったと思いました。
患者さんの立場からすれば、在宅の主治医は入院したら患者をほったらかしにしているわけではない、心配しているのだということが伝わること、入院中のことをちゃんと理解して家に帰っても治療が引き継いでもらえる安心感を感じてもらえることなどがあるかと思います。
そもそもあまり人見知りしないほうの私ですが、自分から病院に出向いていくことはちょっと行きにくいものではあります。特に自分の出身校の大学病院ならまだ大丈夫なのですが、あまりつきあいのない病院に行くのは行きにくいものです。それでも病院にも行くと主治医と顔の見える関係を作れますし、病院の主治医が感じている問題点を共有することができます。また入院している患者さんが地域の中で大切に思われていることが病院にもわかってもらえますし、在宅での問題点も知っていただけ入院中に対処してもらえることもあります。
「入院から在宅へのシームレスな(垣根のない)支援」などと言うは易く行うは面倒なものではありますが、まめに出向くことでその実践ができるといいなあと思っています。