<コロナ禍で在宅医療どうする>
2020.4.23 15:22産経WESTに掲載していただきました。

 新型コロナウイルスの感染拡大で医療崩壊が懸念されている。患者の自宅へ医師や看護師らが訪問して治療・ケアを行う在宅医療でも影響が出始めている。新型コロナ流行下での在宅医療の現状を、京都市内で在宅医療を手がけ、産経新聞大阪本社地方版で現場からのリポートの連載を執筆している医師、尾崎容子さんに聞いた。
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 新型コロナウイルスで医療環境が大きな影響を受けています。当院は通院ができない方が患者さんなので、私が患者さんのところにウイルスを持ち込まないように、「人との接触を最低限にする」ということを実践しております。
 具体的には、まずは患者さんへの訪問をこれまで私と事務員の2人で伺っていたのを私1人で行くようにしました。そのほか、当院の事務員の電車・バス通勤者は在宅ワークに。医師は、私ともう1人常勤医がいるのでその2人の動線が重ならないように時間差で出動する。医師の訪問業務が終われば速やかに退勤し、自宅でカルテ記載などの事務処理作業をする。
 旅行に行った従業員は帰宅後14日間自宅待機とする(給与は半額支給)。ちょっとでものどが痛いなどの症状があれば休んでもらう。もちろん手洗いとアルコール消毒は欠かさず行うなどです。
 在宅医療では患者さんはもともと出かけることができない、動くことが難しいみなさんですからあまり生活は変わりません。しかし、デイサービスの利用ができなくなって、入浴が難しくなったり、ショートステイの利用に制限があったりして、これまで受けることができていたサービスが受けられない状況が生じています。
 あるご家族さまは「もし自分が感染してしまったら、自分で動けない母をおいて入院になってしまう。この時に母も濃厚接触者になってしまって、ショートステイでは受け入れてもらえない。どうしたらいいだろう。誰も身内はいないですし、要介護5ですべてに介護が必要な、濃厚接触者を頼むことなどできないんです」と心配されています。
 本当にこのような場合にはどうすればいいのか。あらかじめケアマネジャーさんと相談しておいてくださいね、と一般的には言われますが、相談されたケアマネさんだって困り果ててしまうでしょう。前例がないことですから。この場合、レスパイト入院(家族が介護を休むための入院)を勧めることになると思うのですが、受け入れ先があるかどうか、という問題もあります。その時になって全力で探す、ということになるでしょう。
 コロナ禍で、一般の入院そのものが難しくなっています。先日も腸閉塞を起こした患者さんの受け入れ先を探したのですが、見つからず、1時間たって救急要請をし、救急車と私と二手に分かれて探し、さらに30分かかってようやく受け入れ先が決まったということがありました。このようなときに受け入れ病院を確保する難しさ、考えても怖くなりますが、その時にやるしかないなと思います。

 おざき・ようこ
昭和46年大阪生まれ。平成8年京都府立医科大学卒。麻酔科学教室、集中治療室。16年京都府立医科大学博士号取得。西陣病院麻酔科勤務。25年千春会病院在宅医療部勤務。27年おかやま在宅クリニック開設。日本麻酔科学会認定専門医、日本プライマリケア連合学会認定医、指導医。産経新聞大阪本社地方版で連載「在宅善哉」を執筆中。著書に「それでも病院で死にますか」(セブン&アイ出版)。