父の足切断

糖尿病からの腎機能不全で透析治療をしている父。

その父が足の切断術を受けました。

このことについて、公表するかどうかは難しい問題だと感じつつも、このような「選び難いこと」で悩んでおられる方は多いと思い、ブログにアップいたします。

たとえば胃瘻をつくるかどうか、などで悩んでおられる方もいらっしゃると思います。そのような方に何かしらの参考になるのではないか、と思います。

このあと、父の生きざまを見せてもらう中、思いもかけない展開もあるかと思います。その時にはこのように公表したことをよくなかったと感じることもあるかもしれません。でも、記憶が生々しい間に書くことをしておこうと思います。

【事の発端】

11月に、父が自分の足の爪を切った時に、肉まで切ってしまったということを入居している施設職員さんから聞きました。

「糖尿病」「透析患者」「足の傷」の三個のお題をいただいたら医療職介護職の皆さんならどんな展開を考えますでしょうか。

私も皆さんと同じく「足切断」を思い浮かべました。

しかし、これまで悪運強い父‥‥。

グレープフルーツを毎日毎日4つずつ食べて高カリウム血症になり、脈拍が1分間に24回しか打たなくなった時も、医療職の尽力で復活いたしました。糖尿病患者の足の病変からの足切断…、の悪夢がよぎりましたが「まあ、そのうち良くなるんじゃないの」という楽観的な気持ちで吹き飛ばしました。

【経過】

父は近隣の皮膚科医院に通院していましたが、経過は芳しくないようでした。また熱心に診てもらっている様子でもなさそうでした。困ったと思いながら介入するのもためらわれました。父は透析治療をうけていますので、主治医としては透析クリニックの医師がいます。主治医をさしおいてものをいうことはやめておこうと思い、様子見といたしました。

【介入】

11月末、もともと心臓のカテーテル検査が病院で予定されていました。こちらの病院は私の元勤務先です。

魚屋の父は食事にうるさく、気に入ったものでないと食べません。この父がここの病院の病院食はおいしいと喜んでおりました。脊柱管狭窄症の手術を2回、先のグレープフルーツによる心停止直前を救ってくれたのもこの病院でした。

こちらに入院して心臓カテーテル検査をするときに、循環器内科の先生に「先生、右足の爪の周辺の傷について、皮膚科の先生にも診てもらっていただけませんでしょうか」とお願いいたしました。そのリクエストに答えていただき、皮膚科のほうで診ていただき、ちょっと安心した私でした。

さて、この時の心臓カテーテル検査では、やはり‥‥というか、前回広げたはずの心臓の血管病変がまた狭窄していたとのこと。もう、父の血管は硬くもろく狭くなっているのだなあと改めて感じました。

右足の傷はなかなか良くならず、これはやはり血流が悪いからではないかということでした。そこで、一旦は退院して年末に右足のカテーテル検査と治療をしましょうということになりました。

12月末、右足のカテーテル検査と治療をしました。右足の傷のところに行くはずの血管は非常に硬く、カテーテルが通らないという状態でした。それでも他の血管を広げ、側副血行路が確保されるように治療をしていただきました。ところが。その治療の後、足の傷は加速度的に悪化しました。これはカテーテル治療を契機に悪くなったということではなく、カテーテル治療をしてもなおどうしようもなく悪い状態であったということだと思います。父本人を含め、家族の皆がその認識です。

12月末には痛みがものすごくなってきたようです。何にせよ極端な父(グレープフルーツ4個/日食べる、など)ですが、2日ほどで痛みのためにロキソニンを50回頓用したそうで、透析クリニックの院長先生が私に電話してこられました。

院長先生はここまで痛いのであれば(ロキソニン以外にも結構薬を使っているのは私も知っていました)、医療用麻薬を使うしかないと思うということでした。元麻酔科医で麻薬が好きな私も同意でした。院長先生は普通の薬は院内処方であり、透析クリニックでは麻薬の扱いがないので私のクリニックで処方してほしいというお話でした。なるべく父の医療面では関わらずに家族としてのみ付き合ってきた私ですが、ここで初めて医療者として父と関わり始めました。医療用麻薬を使って痛みを取り、また抗生剤を使って傷の治療を始めました。

年末年始を私の自宅で過ごした父ですが医療用麻薬の恩恵で、痛みを訴えることはありませんでしたが、一方で医療用麻薬の影響でせん妄がひどく出ました。

これについては医療用麻薬を漸減し、対応しました。せん妄の中で父は、魚屋として熱心に働き、またビジネスマンとしても「俺は、熱意のある奴と組みたいんや」と語っておりました。現役を引退し、また会社も魚屋は廃業しているにもかかわらず、熱い思いをぶつけていました。父の幸せな幻覚を取り上げたくない思いと、施設の皆様のせん妄によるお困りを解消することを両立するのに努力いたしました。

1月第2週。

透析クリニックの先生から、足の傷はもう治癒がみこめないだろうという内容の情報提供書が病院の先生に対して送られ、病院を受診してほしいと家族である私にも告げられました。

「ああ、いよいよ下腿切断術か‥‥」そう思いました。

長くなってきたので、この話は、また続きます。

アイキャッチ画像は妹(四女)がドイツに留学していたときの三女、四女と父です。