お正月が終わったなあと思っていたらもう2月の声を聞きますよ。

当院では月頭に次月の予定を配布するので今三月の予定表を作っており、「おお、時間経過が早い!」と恐れおののいております。

1月   去ぬ(いぬ)

2月   逃げる

3月   去る(さる)

と年初の時間経過の早さはよく言われることですが、

4月   死ぬほど長い

というのもよく言われることです。新しいこと・しんどいことをする4月の季節は長く感じられるということですね。

さて、戯言ばかりですみません。

「時間経過が早い早い」とは中年期以降よく言うことですが、実は去年の一年は私にとって非常に長い長い一年でした。

2018年3月に非常勤勤務をしていた千春会病院を退職し、これまでは自院の患者が少ないことから千春会病院勤務が仕事の中心でありましたが、自院での診療業務が中心に変わりました。診療以外に医師会活動もありますし、それ以外の学習活動も多く多忙な一年でした。

来週千春会病院の理事長先生、院長先生とご一緒にお食事をするのです。

退職するときに理事長先生が「一年経ったら私を接待しなさいよ」と激励して送り出してくださいました。私は一年経ったときに理事長先生に胸を張ってお食事をご準備できるようにとこのお食事会を目標に日々を過ごしてきました。自分自身この一年で学んだことは多く、ほんの少し自信を持って先生をご接待できる自分に成長したのではないかと思います。

2018年には京都市北区の椿先生のご推薦で、京都市の依頼で介護予防リーダー研修の講師をさせていただき、そしてまた2019年にも再任で講師をさせていただくことができました。

中京区薬剤師会での講義もさせていただき、製薬会社からの講演依頼もいただきました。

小さな集まりとしては訪問看護師勉強会を定例で、難病事例検討会を定例で続けております。

文章を書くのが好きな自分にとって喜ばしい出来事としては産経新聞地方版に月に2回コラム「在宅善哉」を掲載していただくことができるようになったことです。皆さまどうぞ産経新聞での文章をご覧になられましたら、新聞社の方に応援の声を届けていただけると嬉しいです。

このようなこれまでの経験をアウトプットする仕事の一方で、インプットも充実しました。

春に全国在宅医療医歯薬連合学会があり、多くの熱き在宅医療に関わる皆様に会えたことが2018年の始めの大きな収穫でした。同じ千春会で働いていた方が嚥下困難な人にも飲める日本酒を提供しているにを見てワクワクしたり、ワークショップで同じグループ方が「だって、ニッポンの医療を変えたいじゃないですか!」と叫んでらして、自分と同じ言葉を口に出す人がここにいる!って驚き嬉しく思ったのでした。

小澤竹俊先生率いるエンドオブライフケア協会の研修を受け、人生の最終段階で「困り」を抱える人、「苦しみ」を抱える人を支援する方法について学び、そして「誰かの支えになろうとする人こそ一番支えを必要としています 」という言葉をいただき、自分自身が支えられることについて学びました。そして学びの中で素晴らしい実践をする皆様との出会いをいただきました。

英国に介護と医療についての見学研修に行くこともできました。リーダーの佐々木淳先生を始め、英国ツアーのメンバーの皆さまは地域医療、介護の領域でのリーダーで大きなインプレッションをいただきました。

一人常勤医である当院ですが、近隣の医院の先生との相互扶助で、英国に一週間など遠方に出かける仕組みを作っていく試みの一つが回り始めたことは、地域にも意味のある第一歩を踏み出し始めたことではないかと喜ばしく思っています。

プライベートでは趣味で習っている書道の一門展がありました。年初から3月まではひたすらに書く毎日でした。私の性格上、しゃかりきにやりきらないとエネルギーを持て余して「つまらない」と感じてしまうので、作品の出来栄えはともかく、クタクタになるまで書く、ということを目標にして取り組みました。一門展は素晴らしく、師匠の木村翼沙先生を中心として一門の皆様の結束が実感されました。皆様の取り組みを見て次の一門展ではどのような作品を作ろうかと思いめぐらせワクワクしました。(写真の書は   ただ /ほれぼれと/掌をあわせたい/かしこいひとが/いったように   八木重吉の詩)

一門展の後は、自分の苦手な明末清初の書をブチブチ文句を言いながら取り組み、師匠には「やるなら『嫌い』だとか言わないほうがいい」と叱られながら書き続けました。(それでも「嫌い」「やだ」と言い続けました。プライベートなのだから自分の感情表現は自由にすべしという考えです。仕事の時はよいお顔で頑張っているので自由時間は悪い顔で過ごすことを許容しています。)

字体を真似ることはそう難しいことではないのです。余白の作り方、白場の活かし方、空間としての在りようを二次元の紙の上に表現するということの難しさと、古典の基本を踏まえながら作者の自由闊達さを臨書する難しさに汲々としておりました。実のところ一年の後半は明末清初の臨書は終了していたのですが、一年中ずっと明末清初の臨書をし続けていたような気持ちでした。苦手に取り組み、その中で苦手とする書のすばらしさに気づき、自分が全くその高みに手が届かない悔しさや無力感を経験しました。

私自身は実用の人で実際に使うもの以外をあまり周りに置かないそもそも断捨離の人です。その自分が実用のものではない「書」というものを大切にしていることが自分の人生を豊かにしていることが面白く感じられます。

このように自分の中で新しいことをしたり、苦手なことに取り組んだりしていた2018年の一年はとても長く感じられました。

千春会の先生方とお食事するのを前に「一年しか、経っていないのか」と、2018年3月を遠く遠くに感じ、この一年が長く長く感じられることを改めて実感したのでした。

48歳になるこの中年期に新しいものをたくさん経験し、新しい学びに目をかがやかせることができる人生ってなんと恵まれたことなのかと思います。

遅ればせの年頭の言葉となりましたが、この拙い文章を読んでくださる皆様にも新しい学びを得て目を輝かせる時間がありますようにと願います。