2021年の3月から1年間、医療介護専門職を中心に、ときには子どもさんを教える方や作家のかたなども参加していただき、「看取りの安心勉強会 プロバイダー養成講座」を開催してきました。
「看取りの安心勉強会」そのものも、医療知識がないご家族や介護職に「安心」を与える意義深い勉強会だと思っていますが、その勉強会をいきなり実施しても、あまり相手には響かないのです。ある程度の信頼関係が素地にないと聞いてもらえないし、内容も入っていきません。
 もちろん多職種向けの勉強会などでは有効なのですが、それは「勉強会するよ」というお墨付き・権威付けができているから「聴いてもらえる」ということなのです。
 「看取りの安心勉強会プロバイダー養成講座」は2日間計10時間の長丁場ですが、その大半(7.5時間)は悪い知らせの伝え方や拒否の扱い方に充てております。勉強会をいきなり実施しても「入らない」。「どうすれば聴いてもらえるのか?」「どうすればご家族が看取り状態だと受け入れてもらえるのか?」について、解説し、ワークで実感していただきます。悪い知らせを聞けば誰だって苦しい、つらい気持ちになるものです。そのような、苦しい、つらい気持ちを持つ方とのコミュニケーションの仕方を含めてバッドニュースコミュニケーションとして講義し、ワークを行っています。
 さて、この3月から、医学書院の『訪問看護と介護』誌にて『バッドニュースコミュニケーション塾』という連載を6回の予定でおこないます。誌面をご提供くださった医学書院の小池倫平様には感謝申し上げます。この連載を通じて、私自身改めてバッドニュースコミュニケーションに関する言語化が進んでいると感じます。
 そこで、これまでの「看取りの安心勉強会 プロバイダー養成講座」から、ガラリと模様替えをして「バッドニュースコミュニケーション術〜拒否の扱いと苦しむ人とのコミュニケーション」を開催いたします。これまで「参加したいが2日は時間がとれない」というお声もありましたので、講習を1日に短縮いたします。今のところ5時間の予定ですが、もしかすると6時間になるかもしれません。
 これまでご参加くださった皆さんにも新たな気持ちで楽しんで受講していただけるように、あらたな「モヤモヤ・ワーク」もご用意しております。正解がないコミュニケーションのワークでまた頑張ってモヤモヤしませんか!
 なお、端折られた5時間のうち2.5時間は「多死社会における多職種連携」の講義なので、こちらはe-ラーニングにいたします。倍速設定でお楽しみください(笑)。多職種連携を模索した私の困難症例(これまでは、「熱心な兄妹のお二人が、終末期状態のお母さんに『リハビリさせてADLアップさせて』『流動食じゃなく固形の食べ物を食べさせて』と、施設に要求するモンスターファミリーの症例」でした)も、新しい症例で解説いたします。また残る2.5時間は「看取りの安心勉強会 実践コース」として、勉強会のプレゼンテーションの練習講習を別途ご用意いたしました。

料金は「バッドニュースコミュニケーション術講座」が25000円(税別)で1年間繰り返し受講可(上限なし)です。こちらの受講生は1年間「グリーフケア勉強会」も無料受講可能です。
また「看取りの安心勉強会 実践コース」は「バッドニュースコミュニケーション術講座」受講済者のみの限定コースで5000円(税別)で、こちらも1年間繰り返し受講可です。
いつも当院で頑張ってくれている事務局の伊藤愛のサポーター見習いとして学生アルバイトのはなちゃんが受講を見学してくれました。感想を聞くと、新鮮な驚きに満ちていました。
「共感するって、私なら『わかるわかるー!』って盛り上がるのが、共感の力かなって思っていました。でも、『私、もう死ぬのかな』って言っている人に『わかるー!』ってないよね。苦しんでいる人を温める方法を聞いて、すごく新鮮だった!」って。
 楽しいことは「わかる、わかるー!」って盛り上がれますよね。たとえば「ポテトチップスって、一度開けると、全部食べちゃうよね!」「わかるわー!」って。
 でも、「私・・・エントリーシート30社に送ったのに、面接にすらたどり着かないねんよ・・・。」って言われた時、内定が3社決まっている自分は「わかるー!」って言えないですよね。立場が違ったら、共感ってできないのかな?
 私たち支援者は、健康だったり経済的にも問題なく暮らしていたり、恵まれた日々を送っています。そのような者たちは、死を前にした人や経済的に困窮する人に共感したりすることはできないのかな?または共感しようと支援しようとして、苦しんでいる人から傷つけられてしまうことは仕方がないのかな?
 そんなことはありません。知識を得ることで自分自身を守り、そして相手を温めることができるのです。「知識は力」です。
 知識を得ることで自分の力がつき、支援することが楽になります。そして何より患者さんやご家族さまから笑顔をいただけます。その笑顔が自分の仕事の原動力になります。
 受講者の皆さんがよくおっしゃられる言葉をあつめました。
「しんどくなくなりました。」「前は出禁などありましたが、今は『あなたが来てくれるのが楽しみ』と言われる」「拒否されてもつらくなくなりました。拒否されても『オッケー、作戦通りです』ってOKマークを作って、ケアマネジャーを励ますことができるようになりました。」そして皆さんがおっしゃいます。「待てるようになりました。」
 患者さんの言葉を待つことも、拒否する気持ちが前向きになるのを待つことも、焦らず待つことを作戦のうちとしてできるようになったことで皆さん楽になったと言ってくださいます。
 2022年4月開講です。実は今準備中で、伊藤愛から「先生・・・間に合いますか?」と心配されています。大丈夫です。骨格はできているので、あとは、伊藤さんに素敵なスライドに仕上げてもらうように頑張ります。