「先生にとって覚悟の時って、どんなものでしょうか」
こんなことをインタビュアーさんに尋ねられました。

うーーーーーん・・・・。
・・・覚悟・・・ってなんでしょう?

こんな時は人生の羅針盤、google様にお尋ねしてみます。
「覚悟とは」←検索

1.
悪い事態(に多大の努力がいるの)を予測して心の準備をすること。
2.
仏教 迷いを去り道理を悟ること。

うーん。悪い事態を予測して心の準備をすること・・・、はしていると言えばしているし、しないと決めていると言えばしないと決めているし・・・。
そもそも「悪い事態」ってお金のこと?人とのつながりのこと?健康や生命の予後のこと?

いずれもどうってことないです。

お金は「なんとか」なります。本当に。
いろんな皆さんの最期をみとっていると、「お金は無くてもなんとかなるな。中途半端にあるほうが身動きがとれないな」って思います。
そして中途半端にあるなら(たとえばマンションは持っているけど現金がないなど)、固定化している資産(不動産など)を流動資産(現金)に変えるなどは必要かもしれません。
そのための知識や経験はあるので、認知症状が気になり始めたらきっと動くと思います。

人とのつながりについては大事だと思っていますが、「大切なつながりのある人」一人に期待をしておりません。
たとえ家族でも生き別れ、死に別れがあるし、心変わりもありますからね。
多くの人の最期をみさせていただいて、「最期を看取るのは家族でなくてもいいかも」と思うことも多いのです。
人生の途中で大切と感じられる人はそのときどきで変わるなと感じます。それが自然なのではないでしょうか。
自分は今、家族以外にも仕事の仲間や学びの仲間が支えになっていると感じます。
今後、趣味の仲間などもできてくるといいなと思います。

生命の予後については、これは人は死ぬものなので、まあ、仕方がないことかと思っています。
そして、納得医療を受けることができるのなら、もうそれでいいのではないでしょうか。
その納得医療を受けることができるように自分自身頑張っています。

・・・など、悪い事態に対して心の準備はそれなりにできております。
一方で、予想できないことにあまり汲々と心配することはいいこととも思っていません。

「2仏教的な迷いを去り、道理を悟る」のは、今世では難しそうです。
来世の課題でしょうね。来世に頑張ります!

・・・さて・・。
とはいえ、インタビュアーに「覚悟について」尋ねられて、私は回答しなくてはなりません。

覚悟についてはよくわかりませんが、「覚悟を求める人」に対しては言いたいことがあるのです。

在宅医療をしているベテラン医師、学会がランチョンセミナーを依頼するほどの医師が言いました。
「私は、患者家族には言っています。『在宅看取りをするには覚悟が必要です』と・・・・!」

・・・・・。

あのー。正直に言っていいですか?
「オッサン、アホか。ほんまにやめとけや。」

どうして、看取りの経験もほとんどないような素人に覚悟を求めるのでしょうか?
覚悟を素人に求めるべきではなく、覚悟が必要なのは、医療者ではないのでしょうか?

私はご家族にはこのように言います。
「覚悟ぉ?そんな怖い、怖い。そんなん、見たことないもんに、覚悟なんてできるぅ?難しくないですか?覚悟なんて要りませんよ。
自宅で看れると思ったら私たちが一緒にいるからそれでいいし、自宅でみられへんって思ったら、病院の先生で私が信頼できるって太鼓判を捺せる先生にきちんとつないであげる。
だから、そんな覚悟なんて要らんよ。まるっと任せてよ。」

「だって、人が死ぬのって自然なことなんやから。怖くないのよ。
でも、しんどいのは嫌よね。だからしんどくないようにお薬を使っていきますね。
とは言うものの、しんどいのをとり切るのは難しいのですよ。だるさとか、全身倦怠感とか取り切れへんかなあ。
しんどいのをみてられないって思ったら、病院につなぐから言ってね。」

「病院に入院するメリットは、家族の目から離れること。しんどいのをみないで済むってことね。
一方で病院に入院するデメリットは、家族の目から離れること。ずっと一緒にいられないってことね。
だから、この期におよんでは、メリットとデメリットが同じところにあるってこと。
それを決めるのはご本人とご家族のお気持ちやけど、これって難しいことやし、揺れますよね。悩みますよね。
でも、私たち、いっしょに揺れていきますから。今すぐ決めようってしないでいいからね。
覚悟もいらないからね。ゆっくり揺れていきましょうね。一緒に揺れますよ。」

こんな風に言ってます。

医師や看護師の皆さんには「覚悟して」じゃなくて、こんな風に説明して欲しいなと思っています。
「残り時間が短いかと思います。でも、まだ、この生きている時間がいいものになるように、できることをしましょうね。耳は聞こえてるから、たくさんお話ししてくださいね。」
必要なものは覚悟じゃなくて、「まだこんなことができるから、一緒にやっていきましょうね」ということなのです。
怖い先生、じゃなくて、安心ドクターがたくさんいてくださるといいなあ。

………なんで素人が覚悟決めなあかんねん。
ほんまに、オッサン、あほか、って何度も言います。
しょーもないこと言うなっちゅうねん。本気で怒っております。

学会の偉い先生に対してベタベタの大阪弁で反抗する。
これが、私の「覚悟」かな。そんな風に思います。